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「市へ不動産を遺贈する」遺言書では思いが叶わないかも。
『願わくば花の下にて春死なむその如月の望月の頃』(西行)
春になったらいつも思い出すのが、この西行の詩。
「願いが叶うなら桜の下で春に死にたいものだ」と歌った西行は、本当に桜の時期に亡くなったそうです。
こんにちは、司法書士の国本美津子です。
人生ってなかなか自分の思い通りにならないですよね。
ましてや、亡くなる時期は誰もわからない、神のみぞ知るというもの。
なのに、歌に詠んだように自分の願いどおりに桜の花が咲く頃に亡くなった西行は幸せな人だな、と桜の花を見るたびに思い出します。
◆遺言書で書いても思い通りにならないことも。。。
遺言書に財産を誰に遺すのかを書く事であなたの最期の意思を実現することができます。
ですが、せっかく遺言書を書いてもその通りにいかない事もあります。
それが「財産を市に遺贈」する場合。
あなたのせっかくの思いが受け入れられないこともあるんです。
◆「市へ財産を遺贈する」遺言書
「身寄りがないので自分が亡くなった後の財産を永年住んでいる市へ寄贈しよう」
そう思われる方も少なくありません。
現金や預貯金は生前に介護や病院費用がかかり僅かしか残らないが、自宅の土地と建物なら価値があるので市に寄贈することで有効活用してもらえるのではないか。
そういう思いから遺言書に「土地と建物を○市へ遺贈する」と書かれる方もいらっしゃいます。
しかし、実際には必ずとは言えませんが、資産価値が低く維持費がかかる不動産の場合、自治体は遺贈を断る場合があります。
以前、神戸市役所に「不動産を遺言書で神戸市へ遺贈するという遺言書があれば不動産を受取ってもらえますか?」と電話で問合せたことがあります。
「基本は現金で遺贈をしてもらいたい。不動産の場合はお断りすることがあります」という回答でした。
不動産の詳しい説明を行っていませんので実際には遺贈した不動産を受け入れをしてもらえこともあるかもしれませんが、一般的には不動産を自治体へ遺贈することは難しいのが現実です。
維持管理がかかる不動産の場合、受け入れを行った自治体に管理維持する責任が発生するだけでなく、市の所有となれば固定資産税が入ってこなくなることから、遺言書で不動産を自治体へ遺贈すると書かれていても、自治体の議会の決議によっては最終的に遺贈を断られる場合も多いに可能性としてあります。
「自分が住んでいた市や社会の役立ちたい」という思いで遺言書をのこしてもその思いが届かない。
生きてる時だけでなく、亡くなっても思い通りにいかないのが世の常かもしれませんね。
ですが、「不動産を売却換価して、その換価金を市へ遺贈する」という遺言書だったら、現金を市に遺贈することになり恐らく市が受け入れてくれる可能性はあります。
ちょっとした遺言書の書き方の違いで、市に社会に役立ちたいという思いが実現します。
自治体に遺贈を検討されている方は、遺言書の書き方に注意をして下さいね。
あなたの思いに少しの法律の知識を加えるだけで、思いを実現できることもあるんです。
このブログがそんな皆さんの少しでもお役に立てればうれしいです。
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