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遺言執行者に就職しました
先日、数年前に遺言作成のお手伝いをさせて頂いた方がお亡くなりになりました。遺言では、遺言執行者に司法書士国本美津子が指定されていましたので、遺言執行者として相続手続きを行い、先日無事すべての相続手続きが完了しました。
遺言執行者としてどのように相続手続きを行ったのか、数回に分けて簡単に解説していきます。
1,遺言執行者が就職を承諾する
今回、亡くなられた方(男性、A様)にはお子さんがおらず、相続人は妻B様とA様の兄弟姉妹でした。そのため、ご自分が亡くなられた際に妻B様が相続で困ることがないようにと生前に公正証書遺言を作成されていました。
遺言の内容は次のようなものでした。
(公正証書遺言の一部抜粋)
第1条 遺言者は、全財産を妻Bに相続させる。
第2条 遺言執行者に、司法書士国本美津子を指定する。
遺言者は、自分亡き後、相続手続きを行う者として遺言執行者を遺言で指定しておくことができます(民法第1006条第1項)。
では、遺言で遺言執行者に指定された者は、その者の意思に関係なく相続の開始により当然に遺言執行者となるのでしょうか。あるいは、遺言で指定されていても遺言執行者になることを拒絶できるのでしょうか。
条文で確認してみましょう。
民法第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
「就職を承諾したときは」とあることから、遺言執行者に指定されている者は遺言執行者に就職することを承諾するのか、拒否するのか、選択できることになります。
つまり、遺言で遺言執行者に指定されているからといって、遺言執行者になることは義務ではなく、指定された者の自由な判断に任せられています。
そして、遺言執行者が就職を承諾したのであれば、直ちに遺言執行者としての任務を開始することになります。
2,承諾・拒絶の意思表示はいつまでに行うのか
遺言執行者は就職を承諾・拒絶するかいつまでに意思表示を行う必要があるでしょうか。民法では特に期限が定められていません。
遺言執行者の就職承諾・拒絶は、相続人や他の利害関係人に大きな影響を及ぼします。
たとえば、遺言執行者が就職すれば、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができなくなります(民法第1013条第1項)。一方、遺言執行者が就職を拒絶すれば、相続人が遺言の内容の実現に向けて遺贈の履行する義務を負うことになります。
そこで、相続人やその他の利害関係人は、遺言執行者に対して、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを解答すべき旨の催告をすることができます(民法第1008条)。
遺言執行者は、定められた期間内に承諾あるいは拒絶の意思表示をすることになりますが、期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなされます。
遺言執行者に指定された者は、速やかな相続手続きのためにも、なるだけ早い時期に承諾か拒絶の意思表示をすべきでしょう。
3,承諾・拒絶に理由は明らかにする必要はない
遺言執行者が就職を承諾するあるいは拒絶する、どちらの場合でもその理由を明らかにする必要はありません。
ただ、注意すべきは、一度行った承諾や拒絶の撤回は認められいないということです。就職を承諾したのち辞任するには、正当な事由があるときに家庭裁判所の許可を得ることが必要とされています(民法第1019条第2項)。
遺言執行者の就職を承諾するのか拒絶するかの選択は、慎重に検討することが必要ですね。
今回、A様がお亡くなりになられたことを妻B様からお電話でお知らせ頂きました。数日後、B様には、遺産に関する資料(不動産の権利証や通帳、証券会社の資料)を持って事務所にお越し頂きました。そして、私は遺言執行者に就職することを承諾することとし、その旨をB様にお伝えさせていただきました。
次回は、承諾・拒絶の意思表示の方法と、別の案件で遺言執行者への就職を拒絶したケースをご紹介いたします。
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