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家族信託における信託財産
信託財産とはどのようなものでしょうか。
「金銭的価値に見積もることができる積極財産であり、かつ、委託者の財産から分離することが可能」であれば信託財産の対象とすることができます(寺本昌広「逐条解説新しい信託法」p.32)。具体的には、「現金」「動産」「不動産」「上場株式」「未上場株式」「投資信託・国債など有価証券」「特許権等の知的財産権」などが考えられます。
しかし、特に「上場株式」や「投資信託・国債など有価証券」の場合、金融機関や証券会社の実務的な手続きが進んでいないため、現段階では手続上、信託財産とすることができないのが現状です。実務上、信託財産として活用されているのは「現金」「不動産」「未上場株式」の3つに絞られています。
1、預貯金は信託財産にできるのか?
預貯金口座を信託財産とすることはできるでしょうか?
結論からいうと、信託契約書に信託財産として「預貯金の口座番号」を記載したとしても、預貯金口座のまま信託財産とすることはできません。
私たちが金融機関に預けているお金は預貯金口座に入っていますが法的には「現金」ではありません。預けている口座名義人は銀行に対して預貯金債権を持っており、この債権に基づき口座から現金を出金しています。
もし預貯金口座を信託財産とした場合、預貯金債権を委託者から受託者に移す事になりますが、預貯金口座は金融機関の約定において譲渡することが禁止されている(これを「譲渡禁止特約」といいます)ため、金融機関の承諾がなければ預貯金口座のままで受託者へ「信託による譲渡」をすることができません。
現実には「委託者名義の口座をそのまま信託財産として受託者に託すことができない」ため、実務では信託契約書に信託財産として「現金○円」と記載し、そのお金を委託者名義の口座から出金し、受託者が信託財産として現金で預かる、という形をとることになります。(受託者が預かった現金の保管方法はこちらのブログ「信託金銭の管理方法~信託口口座」でご紹介しています)
2、負債(借金)は信託財産にできない
信託できる財産は積極財産(プラスの財産)に限られていますので、消極財産(マイナスの財産)である負債や借金といった債務を信託の対象とすることはできません。
3、未上場株式は信託財産にすることができる
上場している会社の株式は、証券会社の手続き上、信託財産とすることは現時点ではできませんが、上場していない未上場株式の場合は、証券会社が関与していませんので信託財産とすることが可能です。
日本の多くの中小企業の会社は未上場ですので、そのような会社の株式を家族信託で信託することで、「中小企業の事業承継対策」を行うことも可能となってきます。
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