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遺産分割協議は10年以内に、法務省検討〜日経新聞より
2018年9月18日の日本経済新聞の朝刊に「遺産分割協議 期限10年」というタイトルの記事が載っていました。法務省が相続の円滑と土地活用を促すための制度を検討し、2020年の民法改正を目指します。
現行の民法では、遺産を誰がどれだけもらうのかという話し合い(遺産分割協議と言います)に期限の制限はありません。そのため、相続人が長年協議をしない、話し合いがまとまらない、という理由で土地の名義の相続登記が行われず亡くなった人のままであることが多くありました。
実際、私が担当した土地の相続登記で名義人が亡くなってから30年以上放置していたケースがあり、相続人が20人以上となり手続きに大変苦労し不動産の売却がなかなか進まなかった、という経験もあります。このように遺産分割協議がなされない状態のままでいると、第三者からは正式な土地の所有者が誰かわからず不動産取引に影響を与えることがありました。
今回、遺産分割協議に期限を設けることで、遺産のうちどの不動産を誰が所有するのか話し合いで早期に決めるよう促すことが期待されます。これから法務省の研究会で制度案が示され、2019年2月をめどに法制審議会に諮られる予定です。
新聞によると、新制度の概略は次のようなものです。
(1)遺産分割の話し合いを決める期間を相続開始から10年に限る。
(2)協議がまとまらなかったり、家庭裁判所への調停申立がされないまま被相続人の死後10年経過で、法律に従い自動的に権利(取り分)が決まる。
(3)法定の取り分通りに権利が確定したすると相続人らが共有で所有することになるが、相続人を代表して取引の窓口となる「管理権者」を共有者の持ち分の過半数で設置できる。
(4)相続人のうち行方不明者などがいる場合、その相続人の持ち分を他の相続人が取得できる。その際、取得代金を法務局へ預ける。
注目すべきは、(3)と(4)です。
現行法では共有で相続した土地を売却する場合、共有者全員の同意がなければ売却できません。しかし(3)が制度化されれば、共有者の持分の過半数で管理権者を決めるのですから、全員の同意がなくても不動産取引を早期に進んでいくことができるようになります。
(4)についても画期的な法改正と言えるでしょう。相続人のうち一人でも行方不明であれば相続人全員の話し合いができません。そうなると土地の相続登記をすることができず、借すことも売ることもできませんでした。そのような場合実務では「不在者財産管理人制度」を利用して解決することになるのですが、この制度、思った以上に時間と費用がかかりそう簡単には利用できない、というのが現状です。
法改正によって、他の相続人が買い取ることで不動産の権利関係を早期に特定できるのであれば、今まで以上に、取引を希望する人に売却や貸し出しがしやすくなり、土地の有効活用が進んでいくでしょう。実務的にも(3)と(4)は有効に活用できそうに思えます。
法務省は併せて「相続登記の義務化」も検討しています。遺産分割協議の期限に制限が設定されても、土地の名義書換である相続登記がされないのであれば、不動産取引が進みませんので、相続登記の義務化も当然のことでしょう。
国が本格的に相続円滑と土地活用を促す制度を次々と検討し始めています。これからの法制審議会の内容がどのようになるのか、このブログで報告して行きます。
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