解決事例
家族信託・お客様インタビュー F様
- ご相談者
- (お父様とお母様)神戸市F様 (長男様)西宮市F様 (長女様)島根県N様
- ご相談内容
- 父から財産管理を任され、父の通帳とカードを預かっています。法的手続きに基づいて管理をする方法はないでしょうか。
- 解決内容
-
長男のF様が家族信託をすることでお父様の財産管理を行いたいとご相談にお越しになられました。そこで、最初の面談時に家族信託の制度や仕組み、デメリットなどお話いたしました。
お父様とお母様はすでに有料施設に入居されており不動産は所有されていません。お父様としては、ご自分の預金の管理を長男の方に任せたい、自分亡きあとお母様のために財産を使ってもらいたい、という想いをお持ちでした。
そこで、ご家族のご希望が叶うよう次のような内容で信託を設定することをお勧めしました。
(信託の内容)
委託者兼受益者 お父様
第二受益者 お母様(お父様が亡くなられた後の受益者)
受託者 長男様
信託する財産 お父様の預金から出金した金銭●●円
お父様の亡きあとお父様の遺産である預貯金をお母様のために使うことが出来るよう、お父様には遺言を書いていただくよう併せてご提案いたしました。
今回F様ご家族には、解決内容にも書いているように信託契約の締結だけではなく、お父様には遺言書の作成もアドバイスをさせて頂きました。
お父様の銀行口座を信託財産とすることは出来ません。銀行口座から出金した現金を信託することになります。信託設定後もお父様の日常使いの銀行口座には年金などが振り込まれることから、お父様が亡くなられると銀行口座に預金が残っていることになります。この預金を誰が相続をするのか相続人間で遺産分割協議を行う必要がありますが、もしお母様が認知症などで判断能力がない場合、遺産分割協議を行うことが難しくなります。その結果、お父様の預金をお母様の介護費用や生活費に使うことが出来なくなってしまう場合も考えられます。
そこで今回、このような問題を解決するためお父様には「注ぎ込み信託のための遺言」も併せて作成していただきました。お父様の相続時の預金を信託財産に注ぎ込むことでお母様のために使っていただくことが出来るようになります。
お客様インタビュー
- ホームページから国本司法書士事務所へ家族信託の問い合わせをしていただきました。ご相談される前、どんなことで悩んでいましたか。
- 父は整理が上手で通帳やその他の財産をファイルにきちんと整理し自分で管理をしていました。そんな父ももうすぐ90歳。財産管理を今まで通りできなくなってきたようで、父自身不安に思っていたようです。
そんなある日、長男である私に「お金の管理を任すから」と、父の通帳とカードを私に渡し預かってほしいと言ってきました。親子であっても通帳とカードを預かっていいのかと心配になり、父の財産管理を行うのであれば、きっちりと法的手続きにもとづいて管理する方法はないだろうか、と悩んでいました。
- そこで家族信託をお知りになられたんですね。
- そうです。色々調べていくうちに家族信託という制度があることを知りました。この制度を利用すれば父の財産を法的に管理できるのではないかと思いました。
- 家族信託の制度をご説明していくなかで、お父様の財産管理に有効だという以外にも、長男のF様の心配事が解決できることもわかりました。
- 父と母には長生きしてもらいたいと思っています。もし私が両親より先に亡くなると、両親の財産管理はどうなるのだろうか、といつも心配していました。
家族信託なら、父と母そして私が元気なうちに、家族の将来のこと、そして私が両親よりも先に亡くなっても、他の家族の誰がどのような役目を果たして両親の財産を管理するのか前もって決めておくことができます。私が家族信託を選択した一番の理由は、家族の役割を決めておくことができるという点でした。
- お父様には、信託契約書だけでなく遺言書も作成していただきました。「注ぎ込み信託のための遺言」と呼ばれるものです。
- 父は自分亡き後の母のことをとても心配しています。父が私に通帳とカードを渡す際「これからのこと任す」と言ったのは、父だけのことではなく「母のことをよろしく頼む」ということだと思っています。家族信託では父亡き後、母が受益者になるように設計しています。遺言により父の遺産を信託財産に注ぎ込めば、受益者である母のために父の遺産を使うことができます。父にとっても、私にとっても一番望んでいることを家族信託と遺言で叶えることが出来ました。
- 長男のF様には受託者になっていただきました。妹のN様、F様の奥様やお子さんたちにも第二受託者や受益者代理人として家族信託を担っていただきます。
- まずは私が受託者として父の財産を管理します。私の妻が受益者である父の受益者代理人になることを引き受けてくれました。もし私が父母よりも先に亡くなっても、妻が第二受託者、妹が受益者代理人として父母の財産管理を担ってくれることになっています。そして、遠方にいる妹(島根県在住)に負担をかけないよう、私の長男が必要とあらば妹に代わって受益者代理人となるよう信託を設計しています。今回、長男に家族信託の話をすると、「お父さんが、おじいさんとおばあさんのために、と言うならもちろん引き受けるよ」と言ってくれたので、とても嬉しく思いました。
- お費用についてはどう感じられましたか。
- 父と母が築いた財産は父と母が自分たちのために使い切ってほしい、と思っています。そのための家族信託ですから、その希望が叶うのであれば高いとは思いませんでした。
- お父様には何度も事務所に打合せにお越しいただきました。信託契約書と遺言が完成した後、何かおっしゃっていましたか。
- 父の「財産管理を任すから」という一言から始まった家族信託です。すべての手続きが終わり父が先日、「もう、わし国本司法書士事務所に行かなくていいの?」と言っていました。信託契約書と遺言書の作成が終わり「これで全部できたんだな」と父もほっと一安心しています。
- 信託契約書の作成が終わった今、あらためて感想をお伺いさせてください。
- 受託者としてしっかりと任務を果たすことが、今まで育ててくれた父母への恩返しだと思っています。実際に信託契約書の作成を通じて思うことは、家族信託は「劇の役者」を決めることなんだ、ということです。
信託契約書に、決められた役者が、誰のために、どんな時に、何をするのか決めていきます。あとは役者が信託契約書どおりに演じていく。そうすることで、今の家族の物語が作られていくのだと、感じました。
今回の家族信託がきっかけで、子供たちとも将来のことを話す機会を作ることができました。次は私と子供たちとで新しい家族の物語を作っていくつもりです。
- 最後にこれから家族信託を検討してみよう、と思われている方にひと言メッセージをお願いいたします。
- どの家族にも両親の財産管理について、もやもやとした悩みがあるはずです。
家族信託で財産管理の仕組みと役割を作っていくことで解決できる悩みもあるはずです。どうしたらいいのか決断できなければ、まずは専門家に話を聞いてみることから始めてはどうでしょうか。
- ■国本からのひと言
- 今回長男のF様にインタビューをさせていただき、私にとって一番印象的だったのがF様の『家族信託は家族の物語を作ること』という言葉でした。契約書を作成している間は、条項の文言ばかりが気になってしまいます。法的にこの文言で大丈夫だろうか、スキームに問題はないだろうか、と担当させて頂いている間はそのことばかり考えているかもしれません。もちろん私の役目は法的に問題のない契約書を作成することですが、F様からこの言葉をお聞きして、私も家族信託を通じてご家族の物語を作ることにも携わっているんだ、と改めて気付かせていただいたように思います。
家族信託をきっかけに、F様ご家族には、今の家族と将来の新しい家族の物語をこれからも紡いでいただきたいと思います。